工芸作家による帯留めを装いに取り入れることで、きもの好きな人が工芸に興味を抱いてくれたなら。そんな思いで始めた帯留めプロジェクト。今回は、大人の装いを知的に引き立てる「帯留め・アートピース」がテーマです。
田中敦子
工芸について、着物について、田中敦子さんとお話しさせていただくと時間を忘れてしまいます。今回は帯留についてご指南くださいます。
寺田ひと美
<田中敦子>
工芸、きもの、伝統文化を中心に、書き手、伝え手として活動。きものについては、歴史、染織、おしゃれの三方向からアプローチし、多面的にきものの魅力を伝えることがライフワーク。『きもの自分流入門』(小学館)、『更紗』(誠文堂新光社)、『きもの宝典』(主婦の友社)他編著書多数。
会期:2019年4月5日(金)~4月14日(日) 12時~19時
期間中無休 / 最終日のみ17時まで
田中敦子 在廊日:4月5日(金)、6日(土)、14日(日)
田中敦子と寺田ひとみのトークイベント
4月6日(土) 15時~1時間ほど 会費:2,000円
スパークリングワインとお酒に合うお菓子をご用意致します。
展示作品(帯留め撮影/河内彩)
秋濱克大 (彫金)
日本の伝統的な彫金技法・毛彫りを駆使した繊細な描線により生まれる軽やかな羽根モチーフ。銀を中心に、近年はチタンも。陽極酸化発色の色が神秘的な表情で、見飽きない。お洒落着はもちろん、よそゆきにも似合う帯留め。
泉健太郎 (卵殻象嵌)
細かなひびを施した鶏卵で装飾する卵殻象嵌を主に、木工、漆芸の技術で箱や茶道具を制作。金箔や白蝶貝など異素材と組み合わせた新作は、シックでモダンな色づかい。スマートカジュアルな装いを静かに華やがせる。
加藤亮太郎 (美濃焼)
美濃焼・幸兵衛窯八代目。オブジェ制作を経て、桃山茶陶の魅力に邂逅。古典と向き合い生まれる茶碗をはじめとする器には、加藤さんならではのみずみずしさが宿る。帯留めに引出黒の技法を用いるなど、発想もしなやか。
設楽享良 (白磁)
設楽さんは朝鮮の焼き物や初期伊万里に学び、削ぎ落とされたフォルムで日々の暮らしに静かに在る器を手がける。文房具や帯留めなど趣味性の高い小物も得意で、丁寧な細工を施しながらもさりげなく、また、ほのかに愛嬌のある造形はお洒落着にうれしい。
高橋奈己 (白磁)
深く彫り込まれた刻線が生み出す陰影の妙。高橋さんの白磁は、鋭利で有機的で、器という用途がありながらも彫刻のような存在感をまとっている。小さな帯留めにも、その力強さが失われることなく息づいている。
佃眞吾 (木工)
素朴な刳物と洗練された京指物。対極にある二つの技法を学び、さらに木工の巨匠・黒田辰秋を起点に遡ることで見える世界を探りつづけている。銘木彫刻、漆塗り、木画象嵌など、帯留めからも佃ワールドを堪能できる。
古川千夏 (七宝)
艶やかで華やかで、という伝統的な有線七宝のイメージを覆す繊細でミニマムな作品。ひとつひとつの花びら形は、銀線を根気よく加工したもの。そこにガラス粉を納めて焼き上げる。二十代の若手作家だが、職人的な技術力と優れた感性を併せ持つ期待の人。
貴久樹(ムガシルクにロウケツ染めの銀細工文様名古屋帯)
アジアの各地に今も息づく手仕事を尊び、時に日本の技術とクロスオーバーさせて、きものづくりに生かす京都のメーカー。舶来の染織品に大いなる影響を受けた日本のきもの。その原点に立ち返る姿勢は、いつも驚きに満ちている。
宗廣佳子(吉野格子名古屋帯 天蚕糸入り 草木染め、手織り)
紬縞織、絣織の人間国宝である父・宗廣力三(郡上紬)に学び、現在は長野県できものや帯を制作。今回は、名物裂から発展した吉野格子の帯を依頼。草木染めの深く優しい色に信州ならではの天蚕の緯糸づかいがキラリと光る。
上野恭子(古渡インド更紗の金更紗名古屋帯)
インド更紗、バティック、ヨーロッパ更紗、カシミールなど、時を経た外国裂をこよなく愛し、また確かな眼で知られる上野さんが厳選し、柄取りして仕立てた名古屋帯は、古く美しい布地を使ったというだけではない、独特のエレガンスとセンスが感じられる。